「他の人の目には、私の人生は成功の典型的な縮図に見えるだろう。しかし、仕事をのぞくと喜びが少ない人生だった。人生の終わりには富など私が積み上げてきた人生の単なる事実でしかない。
 病気でベッドに寝ていると人生が走馬灯のように思い出される。私がずっとプライドを持っていたこと、認められることや富は、迫る死を目の前にして色あせていき、何も意味をなさなくなっている。この暗闇の中で生命維持装置のグリーンのライトが点滅するのを見つめ、機械的な音が聞こえてくる。
 神の意を感じる。死がだんだんと近づいている。今やっと理解したことがある。人生において十分にやっていけるだけの富を積み上げた後は、富とは関係のない、他のことを追い求めた方が良い。もっと大切な何か他のこと。それは人間関係や芸術やまたは若いころからの夢かもしれない。終わりを知らない富の追求は人を歪ませてしまう。私のようにね。
 神は誰もの心の中に富によってもたらされた幻想ではなく、愛を感じさせるための『感覚』というものを与えてくださった。私が勝ち得た富は死ぬときに一緒に持っていけるものではない。私が持っていけるものは愛情あふれた思い出だけだ。これこそが本当の豊かさであり、あなたとずっと一緒にいてくれるもの、あなたに力を与えてくれるもの、あなたの道を照らしてくれるものだ。愛とは何千マイルも超えて旅をする。
 人生には限界はない。行きたいところに行きなさい。望むところまで、高峰に登りなさい。全てはあなたの心の中にある。全てはあなたの手の中にあるのだから。世の中で一番犠牲を払うことになる『ベッド(賭け)』が何か知っているかい?
 『シックベッド(病床)』だよ。あなたのために、ドライバーを誰か雇うこともできる。お金を使ってもらうこともできる。だけどあなたの代わりに病気になってくれる人はみつけることはできない。物質的なものはなくなっても再度見つけられる。しかし、ひとつだけ無くなってしまっては再度見つけられないものがある。人生だよ。命だよ。あなたの人生が、どのようなステージにあったとしても誰もが、いつか人生の幕を閉じる日がやってくる。家族を大切に、パートナーを大切に、友人を大切にしてください。そして自分を丁寧に扱ってください。ひとを大切にしてください。」

~アップル創業者 スティーブ・ジョブス
2011年10月5日 逝去享年56歳

合掌