大畑教授とは一昨年の10月に一泊研修にて宮崎県椎葉村に行った際にお会いさせていただきました。椎葉村は宮崎県北西部に位置する切り立った山々に囲まれた小さな山村で日本の三大秘境の1つと呼ばれている場所です。「椎葉綾心塾」塾長の綾部正哉氏の話を聞くのに出向いたのですが、椎葉村の夜に同部屋させていただいたのが大畑教授でした。その時交わした言葉が忘れられません。
「僕は多くの教育の現場で不良学生が立ち直る姿を見てきた。だが、どうしても限界を感じることがあった。何らかの理由で5歳までに親の愛情が与えられなかった子供たちは心底更生はできなかった」という言葉です。
別の機会に教授の講演を聞きました。教授が考える教育の究極の目的は「親に感謝、親を大切にする」です。高校生の多くは今まで自分一人の力で生きてきたように思っている。親が苦労して育ててくれたことを知らないんです。このことを教えるのに私は卒業式の日を選びました。視聴覚室に集めた最後の授業です。後ろに立っている保護者を生徒の席に座らせ、生徒に隣に正座させる。全員に目を瞑らせてから、『今まで、両親に迷惑掛けたり心配を掛けたりしただろう。交通事故にあって入院したり、親子げんかしたり、弁当に文句言ったり、それを思い出してみろ』涙を流すものが出てきます。『お前たちを高校へ行かせるために、両親は懸命に働いた。学校の先生にお世話になりましたという前にまず親に感謝しろ』『心の底から迷惑かけたと思うなら今隣におられるからその手を握ってみろ』と言うわけです。
すると一人二人と繋いでいって最後に全員が手を繋ぐ。声を張り上げ『その手は18年間お前らを育ててきた手だ。ゴツゴツした手をしておられるのは、お前たちを育てるために大変な苦労をしてこられたからだ。それを忘れるな』その上でさらに『18年間振り返って、
親に本当にすまんかった。心から感謝すると思う者は、今一度強く手を握れ』というと、あちこちから嗚咽が聞こえてくる。私は『良し、目を開けろ。私が教えたかったのはここたい。親に感謝する授業、終わり』出ていくときに振り返ると親子が抱き合って涙を流しているんです。」
こんな感動の授業をする大畑教授。でも「限界を感じた」ことがあったと部屋で語られました。
5歳までの親の愛が極めて重要であることをしみじみと実感させてくれるのです。
合掌