昨年の今頃は、日本中がラグビー「ワールドカップ」で躍進する日本チームに盛り上がっていました。この日本チームがここまで強くなるための意識改革は、皆で、「さざれ石」を詩にした君が代を斉唱することで醸成された「ワンチーム」という概念があったことをこのコラムにも以前書きましたが、ある人の体験が更に深く、この「ワンチーム」という意味を教えてくれました。それは「受験も個人戦ではなく団体戦である」ということです。
こんな体験でした。進学塾でA,B,C教室という違う地域のクラス10名ずつ計30名の生徒に、まったく同じ講師・テキスト・時間を使って教えていました。ある年この30名の中から15名の合格者が出たとします。各クラスから5名ずつの分布なら何の不思議もないのですが、そうはなりませんでした。合格者の8名がA教室、B教室は平均の5名、C教室は惨敗の2名だったのです。
BとC教室の違いは何だったのか? すぐに分かりました。B教室は仲良しグループでしたが、C教室はいじめがありました。集中できない環境があったのです。
では、AとB教室の違いは何だったのでしょうか? 過去に遡って圧倒的な合格者数を出した卒業生に「どんな勉強をし、どんな雰囲気であったか」を聞きました。そして、発見がありました。B教室は仲良し「グループ」だったのに対してA教室は見事な「チーム」だったのです。「グループ」と「チーム」は全然違います。
例えば誰かが漫画を持ってきたとき、B教室の生徒は注意しません。一方、A教室の生徒は「お前何しとるんや。あの学校に全員で受かろうって約束したんと違うか。合格したら、漫画を回し読みしようぜ」と言います。塾のない日は、B教室は各々が自分の家で勉強しますが、A教室の生徒は、得意な子が苦手な子を教えることで友達の成績をあげようとします。A教室の生徒の合格体験記には、「僕の合格はこのクラスのおかげ。このクラスがなければ決して成し遂げることはできなかったと思う」とありました。このようにお互いがサポートしあって全員で目標達成するという文化ができたとき、もの凄い力になっていきます。「他人中心」とは他者が喜ぶことを懸命にやり、間違っていることはその人のために堂々と正していくという「文化」です。
年度スローガンの「ONE TEAM ONE ISONO」の言葉をしっかり噛みしめて、A教室の生徒たちに習ってまいりましょう。
合掌