創業100年を超えるパナソニックの生みの親、経営の神様といわれた松下幸之助さんはあまりにも有名で、数々のエピソードを残しました。今も京都には松下資料館があり、多くの人々に生きるヒントを与え続けてくれています。その中に私がとても印象に残り、当社もこうあるべきだと思ったことを紹介してみたいと思います。
それは昭和21年、松下電器に労働組合が結成され、結成大会において、社長として祝辞を述べようにも組合員に容認されない状況に直面したのです。そして、場内騒然の内に登壇を許された松下幸之助さんは、次のように語りました。
「労働組合の誕生に私は心から祝意を表したい。今後は組合から会社に対し、提案や要望が出てくるだろう。それが国家国民のため、皆さんのためになるなら、喜んで聴いていこう。けれども聞くべきでないことは聞かない。そして共々に力を合わせて日本の再建に努力していこうではないか」。
この祝辞に割れんばかりの拍手が起こったといいます。当時はまだまだ結成された組合は経営者の悪口を言い、経営者も労使の結成式にはでないのが当たり前の時代でした。そんな労使関係を打ち破るために自ら歩み寄ったのです。
さらに言います。
「労使の関係は“対立しつつ調和する”という姿が望ましい。つまり、お互いに言うべきは言い、主張すべきは主張する、というにように対立するわけです。しかし、単にそれに終始するのではなく、一方では受け入れるべきは受け入れる。そして調和をめざしていくということです」。
組合のない当社でいうと、組合のように社員の意見を代表して言うべき存在が、課長職以上の管理職社員にあたると思います。「対立しつつ調和する」という労使関係のあり方は私を含む役員と管理職社員の関係もこうあるべきと思うのです。
役員と管理職社員の意見が違ってもいい。いや、いつも同じであればかえって危険かもしれません。それぞれがしっかりした自分なりの意見をもち、その意見が「対立しつつ調和する」ことが良いと信じます。
そのような意見には「進言」と「諫言(目上の人の過失などを指摘して忠告すること)」があります。進言と諫言がうまく調和され、体現される会社こそ、必ず良いもの、より進化したものが生み出されるに違いありません。
いその㈱もパナソニックと同じように100年以上継続する企業を目指します。「対立しつつ調和する」高い信頼に基づく関係を創ってまいりましょう。
合掌