最近いろいろな場所で、締めの挨拶を頼まれることがあります。もちろん一丁締めや一本締めをやるわけですが、その前に何を話すのか懸命に考えるわけです。自分の場合は事前に言われることが少なく、実際には、宴の後半になって言われます。するとその時から、料理も酒も喉を通らなくなり、緊張が始まります。何を言ったら皆さんにとって嬉しい言葉、時勢にふさわしい言葉になるのか。自分なりに懸命に考えます。長過ぎず、短過ぎない言葉をひねり出します。実はこの切羽詰まったときに案外良い言葉が飛び出ることがあります。先日も会社経営者が中心の総会の宴席の締めがあり、一言話す機会をいただきました。その内容です。

 「久しぶりの立食形式の懇親会で、着座形式と違っていろいろな方と交流が出来て盛り上がった感がありました。いよいよコロナ禍前に戻ってきたという感触で嬉しく思いました。この3年間、我々は本当に苦しい思いをしました。思うように売上・利益が伸びず、先の見えないコロナ禍で人知れず泣き叫んだこともあったでしょう。それでも経営を続けなければならない我々がコロナ禍から学んだことは『経営者は笑顔に責任をもつ』という言葉ではないでしょうか。我々はコロナ禍という壁を破って人として大きな学びを得た気がします。」

 これに、会場からは多くの共感の声を頂戴しました。よくよく考えてみれば、私たちは総じて他人から受ける影響には敏感ですが、自分が他人に与える影響には多少鈍感なところがあります。実は、私たちの行動や感情は周囲にいる人たちに多大な影響を与え、その場所の空気感を作り、いいことも悪いことも自分に返って来ることをしっかり認識することが大切なようです。ましてや、会社のトップである経営者が笑顔でなかったら、やはり暗さが会社に伝播して、悪い方向に行くことは間違いありません。

 苦しいときの経営者の笑顔は、何にも増して経営に覚悟があることを顕しています。何としても会社を護ろうとする覚悟です。楽しいときはもちろん笑顔。苦しいときもしっかり笑顔。経営者はいつも笑顔であらねばならない。経営者は「笑顔に責任をもつ」のが正しい「生き方」と言えそうです。

合掌